町工場二階空目薬工房

KOICHI FURUYAMA


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一澤帆布『帆布茶団布茶物語』案

一澤帆布に至る道 (5)

帰国してから悔しくて、日本でも日本独自のカバン文化として発展しているところは無いのだろうかとおもっていろいろ探したのであるが、ないのである。基本的に日本の鞄メーカーは明治以降、西洋鞄の模倣から入り、あくまでも西洋鞄の範疇で留まった。

そんな時、書店で見つけたのが中央公論社の「鞄とバックの研究」である。これは実によく出来た冊子で私のバイブルのひとつである。その中で取り上げられていたのが一澤帆布である。
今まで見たことも無いような独創的な形で、コメントに全国の鞄好きの人なら、一度は訪れてみたい鞄の聖地であると書かれている。そういえば私は殉教者である。聖地に行かなければいけない。となって、京都に行くのである。

当時の一澤帆布はまだ木造の古びた建物で、ガラス戸を開けると土間みたいなところがあって、靴を脱いで板の間の部屋に所狭しと掛かっている種々雑多な鞄の中から自分の好みのカバンを探し出して買うのである。
6人くらいの、さもありなんという人たちが漁っているという風情でカバンを掻き分けている。
私も1時間くらい半狂乱のようになってカバンを見てすっかり気に入り「日本には一澤帆布がある!」という結論に達するのである。

そのとき買ったカバンが京都大学地質研究班が一澤帆布に依頼して作ったものである。この時カタログももらってかえるのだが、それは昔のコッペパンを包んで帰りたくなるようなわら半紙に刷られたもので、あまりの有難さに新幹線で目頭が熱くなった。要するに私は一澤帆布の殉教者にもなったのである。
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